テキストデータベース
・楽園世界関連
・原因と結果 ディープ・インパクト
ほぼ光速で宇宙空間より飛来したマイクロ・ブラックホール。
地球を直撃し、それを当たり前のように貫通。
が、衝突時、光速からコンマ以下数桁の単位での速度の低下とそれに伴う時空に生じたわずかなエネルギー変動が、ブラックホールに最終的な寿命をもたらし、光速以下コンマ数パーセントの速度から相対速度ゼロへの瞬間的な減速と、地上三メートルの付近で莫大なエネルギーを開放・消滅という結果を迎えた。
TNT火薬に換算した場合、兆から京トンという単位(さらにブラックホールが持っていた全運動エネルギーと位置エネルギーが加わる。でも時空に穴を開けるには足りないかも?)が使用されうるという、途方もないエネルギーの解放であり、全ての探知システムを物体からの反射波に頼っていた人類にとって、それはまさに不意打ちとなってしまった。
命中したのはほぼ赤道直下の大西洋上。
飛び出したのは、神奈川県の郊外。米国の陸軍基地のど真ん中である。
本来であれば、開放されたエネルギー量からして、日本どころか人類の生存そのものにすら影響を与えかねない甚大な被害をもたらすはずであったが、なんの加減かグランド・ゼロには半径一二〇メートルにわったって、球形の穴が穿たれただけであった。
当初、事件の全容が判明するまでおよそ三ヵ月、アメリカに対するテロ攻撃の可能性を疑われ、便乗して犯行声明文などを発表する組織や集団がいくつも現れたために、中東やら中国沿岸やらでは、ずいぶん危険な状態にまで至っていたのだが、それはまた別のお話。
大切なのは、その時直撃を受けた米国の陸軍基地では、地元住民との交流を目的とした、ある種のイベントが開催されていた事にある。
グラウンド・ゼロを中心に、半径およそ二〇〇メートル。その後の調査で事件に巻き込まれ、行方不明となった人々の数は合計二〇〇名を超えたが、恐らく空前絶後と呼べる規模の宇宙的大災害の結末としては、非常に軽微な損害といえた。
・原因と結果 ディープ・インパクトの裏で……
デープ・インパクト前夜。
東南アジアの某所で発見された「超重量物質(メタグラビティオン)」は米国が獲得し、本国へ輸送の途上にあったが、輸送機の電子機器に異常が発生し、中部の地方空港に緊急着陸してしまう。
慌てて自衛隊と米軍が出動し、問題の物質と人員機材その他を輸送するが、紆余曲折の末、翌日にはお祭りという、神奈川県の某米陸軍関連施設に運び込まれてしまう。
輸送機の不調の原因が、どうやら件の物質にあると考えられたため、祭りの当日、運び込まれた倉庫の一角で、ちょっとした調査実験を幾つか行った。
不幸な事に、地球を直撃したブラックホールと件の物質は、後に「ネクサス」と呼ばれる一種の超空間リンクで結ばれており、実験により、ネクサスを通じて莫大なエネルギーを受け取った超重量物質とブラックホールの相互作用から、転移をもたらす直径二四〇メートルの異常な特異点が生成され、ブラックホール崩壊のエネルギーの大半を消費する事で、特異点内部に存在した全てを抱えたまま、膨大な距離と時間をこえてしまったのである。
事件の後、原子以下にまで綺麗に分解され「消し飛んだ」と思われた人々であったが、数千光年の距離と数千年の時を超え、地球から消えた、その時の状況、状態のそのままで、再びこの時空へと姿を現す事になる。
・惑星ヴァイレサック
ヴァイレサック
FCGS-DBSec-Mk-Vsk
UWP X7668701
主系列星スペクトル型G2V
地球型惑星
衛星数2+
近日点距離1.1AU
遠日点距離1.4AU
公転周期398.84日
赤道面での直径12882.47km
質量4.92×10^24kg
表面重力9.12m/s
自転周期23.2時間
赤道傾斜角22.6°
年齢38億年
大気圧98.7kPa
平均気温14.2
惑星天文学的要因から、比較的寒冷な気候となるヴァイレサックには、2つの大きな双子のような月と、一本の美しいリングが存在します。
ヴァイレサックの陸地は、1つの超大陸と、2つの大陸、さらに2つの大きな島からなります。
全体的には多少寒冷な気候ではありますが、熱帯地域が狭い分、中世レベルの技術力であっても、比較的安全(主に疫学的な部分で)に生活可能な地域が広く確保できます。
海洋はごく狭い海峡で寸断されているため、熱循環が凡そ7つの地域でバラバラに行われており、変化に富んだ気象条件がそろっています。
また、そうした複雑な気象条件が生み出す強烈な熱帯性低気圧によって、毎年凄まじい被害が発生する地域や、温帯域に属する緯度にありながら、一年の半分以上が雪に閉ざされるような、過酷な地域も存在しています。
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・概要:舞台となる大陸
ディータ大陸
大小一〇〇を超える数の国と地域に、ヴォル、プリマ、人間の三大主系種族と、それぞれの亜種が覇権を争う、群雄割拠の世界です。
大半が国王を頂点とする封建社会を形成しています。
大陸の中央は、乾燥した寒冷地であり、アムーレ高地と呼ばれる地方には、広大な礫砂漠が広がっています。また、アルナセル山脈と呼ばれる大山脈を挟んで東方は、比較的温暖で、山脈から流れる大小無数の河川が平野部を潤しています。
また、アムーレ高地から西方の平原地帯は、多くが亜熱帯の密林に覆われ、地図上では、一応の境界線がひかれていますが、沿岸部を除くと、大半が人跡未踏の未開地となります。
また、南の果てのヴォル領域では、冬には海まで凍りつき、北の果てでは、灼熱の太陽が照りつける熱帯の海が広がっています。
ここでは、この大陸の東方の地域を中心に、物語の舞台を創造してゆく事になります。
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・アルールシア帝国(=ダッセル・アルールシア連合王国)
ルシア平原の騎馬民族が、南東ソナスの王国を併呑して成立したアルールシア王国と、永く争ってきた南部のダッセル王国が、婚姻関係により、連合王国となり、周囲の小国を統一して成立。
ダッセル・アルールシア連合王国の王が、代々帝位を受け継ぐ、巨大国家である。
帝国として言えば、未だ名前だけでしかなかった建国の時から二六年、周辺国を平定し、帝国として体裁が整ってからは二〇年であり、第三代皇帝の下、現在も国内の整備に奔走している状況で、安定した国体を築いているとはいえません。
新たな領土として加わった地方の領主に配慮して、帝国としては封建体制をとっていますが、中心となるダッセル・アルールシア連合王国は、国王の下に全ての権力を集中した、中央集権国家となっています。
帝国は、北東からチルと呼ばれるプリマの国、その西のダーラン、西方の大山脈を挟んで、強大なヴォル領域、そして南のヒュヨと呼ばれるプリマの国と、四つの勢力に囲まれており、更に細かく見ると、帝国も一枚岩ではなく、周辺国も一応は帝国への臣従を誓っていますが、時々によって、ダーランやチル、ヒュヨといった勢力と結びついたり、また再び帝国と結んだりと、まだまだ問題が山積しています。
・気候風土
アルールシアと周辺地域の気候を、南から見ていきます。
ヒュヨはほとんどが寒帯に属するツンドラ気候か亜寒帯であり、ダッセルまで北上してようやく、沿岸部の一部地域で大麦の栽培が可能な亜寒帯かステップ気候に属し、アルールシアの東部が温帯、中部から西部にかけては、ステップ地域から山岳階段状地域となり、豊かな盆地と広大な森林地帯と平原が広がります。最西部の山岳地帯には氷河が残っています。
さらに北部のチルやダーランという国々は、温帯から温帯湿潤気候となり、ダーランの北岸で亜熱帯、ムルは熱帯の国となります。
ヒュヨでは、北東部の沿岸で極僅かなライ麦が収穫できる程度で、大半の住民が、シカ科のトナカイに良く似た動物を放牧狩猟して生活しており、氷河によって作られたフィヨルド状の海岸線も散見され、東北部の一部では、漁業が非常に盛んです。ただし、南部、東南部については、冬季は海が凍りつくため、ヒュヨの漁師は、北東の港に家族を残し、夏場は遥か南方の漁場にまで足を延ばして、アザラシや魚や鯨類、それから小型の海竜等を狩り、冬場になると北東沿岸に存在する幾つかの港に帰ってきて、厳しい冬を耐え忍ぶ生活をします。
ダッセルは、アルリョン山脈の東部で大麦や僅かな小麦が栽培可能なだけで、他はステップ気候の大平原か針葉樹林帯で、人々は馬や羊、それからヤギを追う遊牧民です。
アルールシアは、東部の低地地方では小麦や陸稲、中部のステップ地域では馬や羊の放牧、中部の盆地や谷間では大麦や小麦、西部の山岳地帯では羊やヤギの放牧をおこなっています。また、海運業や漁業といった、海洋の利用も積極的に行われています。
ダーランでは米が収穫可能で、アルールシアに比べて国土は小さいながらも、アルールシアの5割近い人口を誇っています。
チルやムルでは、ダーラン同様米の栽培が盛んで、恵まれた気候風土の下、二期作や、二毛作、場合によっては年に三回も収穫可能な地域もあり、様々な野菜や果物等の農産物についても大量に収穫され、陸路や海路を通り、周辺国への輸出も盛んです。
また、チルはプリマの国ですが、他種族に対する、比較的緩やかで寛容な統治が功を奏し、人類やヴォル、それからその他の少数種族の居住する割合が、非常に高くなっています。
大陸東部の沿岸地域は、北部から流れる暖流の影響を受ける、比較的温暖で湿潤な地域と、南部から流れる湿潤ではあるが、非常に寒冷な地域とにわかれており、ダッセルの東方でその二つの海流がぶつかりあい、一部がアルールシア沿岸へと流れ込んでいます。
ネルやハイズの地名がある半島地域は、暖流の影響下にあり、帝国では唯一の温帯湿潤気候地域となりますが、数十年前まで、非常に活発な活動を続けていた火山が存在するため、ほぼ全土がシラス台地に広がる森林地帯で、大規模な灌漑をおこなわなくては、農地としての利用は難しいものとします。
また、半島の人口の大半が居住しているネル盆地は、この半島そのものを形成した火山火山がうみだしたカルデラであり、無数の湧水や温泉、それから東海岸の活火山が名物となっています。また、騎竜の産地としても有名で、良好な騎竜を数多く産出しています。アルールシアでは騎竜の放牧が可能なのはこの地域だけです。
チルの東方沖に存在する群島には、遥かヒュヨや、遠い西方諸国から流れ着いた海の民達によって、一種の海洋国家共同体とでも言うべき集団が形成されており、アルールシアや遥か西方のカレスやワイプルース、それからミーディスといった海洋国家と、東方の海上交易路の支配権を巡って争いあっています。ただし、天測航行が可能なだけの航行技術をもっているのは、ミーディス、ワイプルース、そしてベルリア諸島の船乗りだけで、その他の国々の船乗りは、沿岸航行が基本になります。
最後に、この地方の人々にとって金属資源とは、基本的に農業と同様の、植物を栽培して収穫するものだと思われていますので、樹木の育たない寒帯や高山では、金属の採集ができないものと信じられています。
・身分制度
アルールシア帝国では、長く続いた戦乱で、平民出の子爵まで出現してしまったほど、一時は身分制度(というより戦乱で社会制度そのものが)が崩壊する寸前までいったのですが、ダッセル・アルールシア連合王国の成立の頃から落ち着きを取り戻し、三代目の皇帝の治世の頃には、比較的堅固な封建体制を確立しています。
帝国の制度と連合王国との二重性が多少の問題を引き起こす事がありますが、連合王国の国王と皇帝が兼務であるため、重要視はされていません。
身分は、上位から皇帝、連合王国国王、大公、公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵、準男爵、そして、騎士。
騎士については、公騎士と官騎士の二つの種別があり、領主としての騎士が公騎士、土地を持たない騎士が官騎士となります。
どちらの騎士も一代限りですが、公騎士については、騎士位を後継者を推薦する形で、息子や家族を再度騎士位に就ける事ができます。
爵位や身分制度とは違い単なる役職ですが、騎士団の中で、準騎士や、従騎士と呼ばれる地位があり、事実上準貴族として認知されています。
そして、その下が平民となり、最後は奴隷となっています。
貴族と平民の最大の違いは、土地の所有権になります。
基本的に、平民には土地の所有権はありません。
農民にしても、耕作している土地は、全て領主の土地であり、平民達に与えられるのは管理権だけです。また、領主の許可無く、管理権の譲渡はできません。
また、中央集権が進む連合王国の内部では、全ての地主はその規模に応じて準男爵以上の地位を与えられていますが、帝国のそれ以外の地域では、貴族位を持たない平民と貴族の中間の身分である、郷士や豪族と呼ばれる者達も存在します。
・学者と魔法使い1
帝国では、政治や行政面で、専門の学者に混じって、魔法使いが「賢者」として領主達を補佐してきた伝統があります。
魔法使いは、所謂俗称であり、正式には哲学者兼万物学者です。
ある程度全ての事柄について知っていなくては、マナに関連するする全ての事象に対応できないため、万物学者ですが、中には専門分野を究めて突き進む者もいます。
学者だから魔法が使えるわけでもありませんし、魔法使いの全てが学者ではありません。
・学者と魔法使い2
帝国において学者として認められるには、宮廷学者の半分以上の推薦か、帝国で行われる分科選抜の試験に受からなくてはなりません。
因みに、その分科選抜に合格した者達を学士とし、一般的に学者と総称します。
帝国では魔法使いも「導師」等の名目で、「騎士」同様、一代限りの準貴族位を授ける形で、任用を一元化しています。
これにより、ある程度皇帝の意を汲む形の行政が行われる事となります。
また、学者についても、皇帝直属の「大学」と呼ばれる行政補助機関で試験を行い、任命式を経て学士以上の免許を受けるようになっています。
分科選抜に合格した者が大学機関に入れるものとします。
ただし、大学は現代のモノとはまったく違います。
国家機関で、様々な実務を行う行政機関の一部でもあり、基本的には各行政組織の研修機関です。
つまり学問を学ぶ場ではなく、事実上実践する場であり、学ぶべきことは膨大にありますが、専門的に誰かが教えてくれる場所ではありません。
制度上の上司となる人物は博士(修士は無い)と呼ばれる学者で、行政機関の様々な場で実際の業務を行っているのです。
また、博士になるためには、通常学士として、博学選抜を受けなくてはなりませんが、分科選抜の全てに、優秀な成績で合格した場合、最初から博士として選抜される場合もあります。
博学選抜に合格した者の中から、皇帝が数年毎に各行政の長である導師を任命しますが、通常、その任命は、皇帝の側近の上級文官である宮廷導師達の推薦で決定されます。
因みに宮廷導師も含め、全ての導師は博士の中から、皇帝が直接選抜し任官する事になっていますが、実際にはこれも前任の導師の推薦により決定されています。
それから宮廷導師には任期はありません。
また、宮廷導師の中でも、宰相級の宮廷導師の事を「賢者」と呼ぶことにします。
通常は死後か引退後に贈られる尊称で、「賢者」という特別な位階があるわけではありません。
大半の宮廷導師は、皇帝の幼少期からの学問の師だったり、大貴族からの推薦で決定したりします。
そうした事から、導師や博士や学士達は、魔法を使える必要はありません。
が、分科選抜には魔術関連の学問を専門とする、万物学もありますので、必然的に、魔法に疎い者が博士になる事は少なくなり、導師や宮廷導師の大半は魔法使いでもあります。
同じ理由から、魔法を使えない博士は、ある意味相当優秀です。
裏の事情として、金持ちの貴族が試験で不正を働き、学士や博士となる場合もあります。
博士は位階で言えば、通常の騎士位よりも遥かに上になるので、そうした不正は後を絶ちません。
もちろん騎士位にも様々な段階がありますが、長く戦争やら内乱が続いてきた世界であり、内紛や他国との紛争、海賊だの山賊だのといった、様々な武装勢力との戦いが続く世界ですから、不正を働いて騎士位を受けても、長くは生き残れません。
貴族達の武官離れはますます加速していきます。
この世界に、正式に学校と呼ばれる場所は大学以外にはなく、大学も学問を学ぶ場ではありませんから、通常は、個人で、引退した博士やら学士やらの下へ修行に行きます。
徒弟のような形で教育を行ってくれる者もいれば、私塾のような形で、金銭の対価として様々な学問を教えてくれる者もいます。
いずれにしても、分科選抜に正規の手段で合格するのは、並大抵の苦労ではありません。
特に導師を目指す者にとっては、万物学を修めた博士や学士の師匠を探す事が最優先となるかと思われます。
因みに、貴族の師弟の教育係という『天下り』先も用意されています。
推薦するのは分科毎の導師達です。
そうした貴族の子弟の分科選抜を専門に行うことで、大貴族達の間を次々に渡り歩く『渡り』もあり、分科選抜における不正の温床にもなっています。
ただし、魔法が使える者と使えない者との差が天と地程になってしまう万物学においては、渡りのコースが非常に限られてしまうため、必然的に不正の余地は減る事になります。
魔法を使う者は、分科選抜学士であり、その専門は万物学で、万物の基本と考えられていたマナの研究が専門であり、行政面ではマナ関連の技術開発を行い、マナが関係する問題ごとの大半、特に妖魔や魔物関連、に責任を負っています。
当然、帝国の軍部つまり騎士団に強い影響力を持ち、その他の多くの分科行政に対してもある程度の発言権を認められています。
帝国内で認められている全ての魔法使いは学者(その逆は全てではない)であり、万物学者は時代の最先端の研究を行う科学者であるという、強い誇りをもっています。
・貴族
貴族とは、自らの軍事力を提供する代わりに、支配者から土地を分けてもらい、その土地から得られる収入によって生活をしている者の事をいいます。
が、中央集権が進む連合王国内部では、土地を持たない商経済や傭兵団の運営を基盤とした、準貴族達が登場しており、その中から、土地を持たないまま貴族位に列せられる者も現れています。
・豪族・郷士
国の身分制度外に位置する存在ですが、領主であるため、一応貴族として遇されます。
その多くは、実力でその土地を支配する武装勢力ですが、討伐するより味方にして取り込む方が有効ですので、辺境地域には、そうした武装集団が多くみられます。
・平民
土地を持たない一般人です。
・奴隷
奴隷には、契約奴隷、犯罪奴隷、そして身分としての奴隷があります。
契約奴隷は、その名の通り、金銭や様々な義務や権利の対価として、一定期間、奴隷として「雇用」された者をいいます。
犯罪奴隷は、その名の通り犯罪を犯したものを、刑罰として奴隷の身分に落とす事をいいます。
顔や身体の一部に、焼印や刺青を入れられる、言わば終身刑です。
身分としての奴隷は、古来、戦争などで滅ぼされた国の人々が、奴隷として働かされています。
こうした人々にも、やはり顔や身体の一部に焼印や刺青を入れられます。
・解放奴隷
様々な功績や、要因により、奴隷の身分から開放される者もいます。
その場合、開放奴隷である事を示す新たな焼印や刺青を入れられる事になります。
極まれな例として、魔法によりその痕跡を消してしまう場合もあります。
・ロマ
身分というより、国際的な移動生活を行う、様々な少数民族・種族の総称である。
あらゆる国家的な庇護から外れた存在とみなされている。
そうした人々は無数に存在し、大半は、ヴォル族の管理する大陸公路を移動し、交易や芸能を生活の糧としている。
・騎士
一般的に使用される、あらゆる武器に精通し、騎兵としての訓練を受けた者。
騎士は、それぞれ一定の領土をもつ領主である。
アルールシアでは、領土を持たない騎士も多いが、他国では、領土を持たない騎士は騎士とは認めていません。
騎士達は、その領土からの収入によって兵を養い、戦時には兵を率いて戦うことになる。
一般的に、軍の最小単位が、騎兵である騎士とその兵達になる。
一代限りの名誉職のような身分だが、一応土地の所有権があり、封土を与えられる事もある。
与えられた封土については、後継者を指名、もしくは推薦する権利があり、通常は自身の子供を指名し、騎士位を継がせる事もできる。
・騎士の使う乗用動物
この世界の馬には、軽種、中間種、重種がおり、戦場で使われるのは、時に体重が1トンを超える重種になります。アルールシアでは通常、軽種と中間種が使われますが、重種やポニーも存在しています。
アルールシアでも、騎士達に好まれるのはもちろん重種ですが、国が騎士に用意する軍馬は、主に財政的理由から、大半が中間種になります。(が、金銭的な余裕のある騎士達は、受け取った中間種を売り、それに自己資金を足して重種の馬を手に入れる場合が多いようです)
農耕で好まれるのも重種が多いようですが、非常に高価で入手も困難であるため、比較的安価な中間種を用いる事が多くなります。大規模な商家では、連絡や移動で利用するため、軽種の馬を多く用意し、利用しています。
また、交易や輸送の分野では、粗食に耐え持久力の高い中間種が多く、大陸南部に行くと、寒さに強いポニーが使われている地域が多く見られます。
プリマの国では、体格的にポニー(や蒙古馬系の馬)を乗用とする場合が多いようですが、基本的に騎馬突撃は戦術としては考えられておらず、弓騎兵による騎射が、馬を使った場合の戦術となります。
ヴォル領域では、シャイド(サンドワーム)と呼ばれる巨大な六脚の節足動物を乗用にしています。肩高(?)1メートル、全長2メートル、体重は300キロほどで、太い腹を引き摺るようにして歩く、平らに潰したアリか、毒針の尾を持たないサソリのような形状です。
感覚器官と神経節の一部を切除して使役するため、操作から餌やりまで、全ての面で面倒をみてやらなくてはなりませんが、暑さ寒さに強く雑食で、一度大量の食事を取ると、長期にわたって水だけで活動する事が可能です。さらに馬やその他の乗用動物よりも遥かに強靭で持久力があり、しかも騎乗した際の振動や揺れが少ないため、乗用動物としては最も適しています。
鞍を置いて騎乗するのではなく、平らな背に専用の椅子のような物を載せて固定し、鐙ではなく、フックで足先を固定します。立っても座っても操作が可能です。
人の世界でも少数が使役されていますが、人やプリマの耳ではこの動物が発する音を聞き取れないため、健康を維持することが難しく、人やプリマの世界では一般化していません。
古くから騎士として、領地を維持してきた者の大半が、重種を維持保有するための放牧地を確保しており、領地持ちか無しかの区別は、大抵の場合馬で判別可能となります。
騎士にとっても農家にとっても、重種の馬を手に入れるのは、一種のステータスとなります。
また、帝国全体でも数百頭に過ぎない数ですが、竜(と呼ばれる乗用のサイ)に乗る竜騎士もいます。
帝国では海流の影響もあって、最も温暖な北東地方(これ以上南になると、冬の寒さに耐えられません)で飼育されており、帝国成立時の乱では竜騎兵達が活躍しました。
地球のサイよりも遥かに温厚で扱い易く、調教もしやすい動物ですが、子供や信頼する者を守るためであれば、その角を振るう事を躊躇しません。皮膚も強化されているものとします。
体長4メートル、肩高2メートル、体重は最大で4トンに達します。
最高で時速50キロメートルに達する突進力は圧倒的です。
・経済
帝国では初歩的な貨幣経済が発達していますが、帝国の発行している貨幣の流通量はさほど多くは無く、連合王国で使われていた物や、既に帝国以外に新たな貨幣の製造は禁止されているものの、帝国に臣従する以前に製造されていた、公国や大公国、それから近隣諸国が製造した貨幣も流通しています。
もちろん帝国国内では、そうした貨幣を集めて帝国で発行している貨幣への更新を続けていますが、まだ、他国や古い貨幣の流通を禁止できるだけの経済的な体力もありませんし、主に流通量の面での信用も育っていないため、複数の国家が発行している貨幣の併用が続いています。
結果として、両替商の銀行化や、大量の貨幣の交換に伴う手形や切手に関する信用制度が発達をはじめています。
ただし、貨幣経済が通用するのは都市部だけであり、農村部では、そもそも貨幣の数そのものが少なく、その価値や両替時の換算率についての知識もないため、物々交換を基本にした経済が根強く残っています。
・商人と職人
・軍事
帝国には、複数の軍事体制が並存しています。
帝国の軍隊として、皇帝直属とされる皇帝軍。
皇帝に臣従した貴族達が有事の際に拠出する帝国軍。
連合王国や、その他の貴族や領主達の持つ私兵集団である、騎士達。
豪族や郷士たち。
そして最後に自由戦士や傭兵達です。
一つづつ確認していきます。
・皇帝軍
帝国の軍隊として、皇帝直属とされる皇帝軍。
帝国としての収入源である、様々な許認可権や直轄の領土、都市からの収入と、兵権を返上した貴族(警備の兵士は残っているが、有事の際に兵力の拠出を免除される)からの税金によって賄われている兵力。
連合王国及び、帝国全土に存在する直轄領と、兵権を返上した貴族の領土からの志願兵によって成り立っている。
・帝軍の階級と指揮系統
皇帝軍の兵士となると、能力を示す事で、最下級の下卒から、上卒、兵卒、兵卒長、兵士、兵士長と段階を上がる事ができ、武勲を上げるか、一定の能力を示す事で、官騎士資格を得ることができます。さらに様々な規定をクリアする事で、騎士に叙勲してもらう事ができ、武勲を上げれば、封土を授けられる可能性も出てきます。
また、皇帝軍の騎士は、白金(プラチナ)、金、銀、鉄、銅の五つの騎士位が用意されており、銅以上の騎士は、一応貴族として認められています。
また、騎士は全て騎兵ですが、皇帝軍では、そのまま他の兵科、歩兵や弓兵の指揮をとる事もあります。
結果として、騎兵を指揮する騎士や、弓兵を指揮する騎士など、皇帝軍では階級と兵科の区別が明確になってきています。
・領主軍
封建体制の下、与えられた封土からの収入により維持・運用される軍隊。
貴族や郷士・豪族達の軍勢がこれにあたる。
言わば貴族の私兵集団であるが、貴族たちの領土は自治が認められており、事実上完結した一個の国家であり、同じような地域の同程度の規模の領地でも、領主によって、その力には大きなバラツキが生じる。
戦争の規模が小さい間はともかく、領土が広がり、それにしたがって戦争の規模が大きくなると、複数の領主軍を、同一の戦闘単位として運用する事が難しくなるという問題点がある。
また、封建体制下の軍隊とは言え、予算によって運用されている事に変わりは無く、また、封土を与える行為そのものが、領土の防衛を主眼に置いた制度であるため、主に兵站上の問題から、防衛戦争以外での、長期の戦争には向かない。
・傭兵と自由戦士
社会の変化と共に傭兵の需要が高まっている地域が多くみられます。
中には、国をあげて傭兵家業に力を入れているところもあります。
封建体制下の小領主達の勢力争いの結果として、領土を失ったり、主を失った騎士達が、戦果を上げる事で、新たな封土や主を得るため、戦場を渡り歩いたのが自由戦士のはじまりである。
それに対して、平民で、税を払えない者が、納税の代わりに労役を行う制度があり、それがその後、農業生産力の向上と人口増加と共に、農村部の余剰人口の一部が、税の軽減を目的として労役を専門に行うようになった。
それが常態化していったのが傭兵の起源となる。
当然、自由戦士は元が騎士であるため、騎兵としての能力もあり、専門の教育を受けている場合が多く、どこにいっても重宝される傾向が強いが、傭兵に関しては、使ってみるまで、戦力としてどの程度期待できるかわからない上に、税逃れの厄介者としての印象が強い。
・騎士団
特定の思想や志向の下に形成された騎士集団で、その始まりはダッセルとアルールシアとの間で行われた、恒常的な戦争状態にあります。
一代限りの騎士団長の元に、数十から数百の騎士が集まり、主人である王や皇帝に、武力をもって仕えます。
領地を持つ騎士団もありますが、通常は皇帝や王などから、必要な資金を得ています。
また、騎士団の運営については騎士団長に一任され、自治が認められており、運営資金を補うため、両替商や高利貸し等の商売を行う事も認められています。
・宗教
帝国では、無数の神殿勢力の大半が、一つの多神教的神話体系の中に組み込まれており、神殿勢力同士の争いは少ない。
また、独自の戦闘集団を維持している神殿もあり、防衛戦争の場合や、敵対する神殿勢力との戦いでは、帝国や土地の領主に対し、兵力の拠出を行う場合もある。
多くの神殿勢力は、荘園(鉱樹類の栽培を行う農地)や領地をもち、その力は下手な大貴族よりも強い。
アルールシアの主な神殿勢力
エディウス:主神。天空神。王の守護神。あらゆる契約と誓約の守護神。
アエリス:最高位の女神。結婚生活や女性の守護神。
:知恵の女神。勝利の女神でもある。
:光の神、太陽神。芸術の守り神でもある。
:農耕神。戦士の性格をもつ。
ミルヴィー:白い月と愛の女神。美の象徴。
:商業、交易の守り神。神々の使者として地上に現れる。
ミルヴィー;青の月と森と樹木の女神。出産を司る。
ヌトゥース:海神。水の神。航海の守護神。
シリレス:大地の女神。豊穣の女神。良き死の送り手。
:火の神。大地の支え手。鍛冶や金属加工の守護神。
:家庭の守護女神。王の守護女神。
他
・神殿
主神殿と従神殿に分かれます。
主神殿には神が住むとされ、実際にその力の一端を垣間見せてくれる事もあります。
また、病気の治療や死者との再会等の奇跡を成す神殿もあり、当然そうした神殿の影響力は大きくなります。
大半の従神殿は象徴的なもので、神々の存在も象徴的なものとなります。
・文化・芸能・芸術
常態化した神殿勢力と領主達の緊張関係が、様々な宗教儀式を生み出し、神々の教えや神殿勢力の影響が、身分を問わずに浸透している。
芸能や芸術、音曲や歌舞の大半が、神々の世界を題材にして作られている。
また、冬季に農村部を回る語り部や、音楽を奏でながら歌う、吟遊詩人達も、重要な文化の担い手となる。
・性差別と恋愛 1
性差別。
戦乱の続いた混乱期には、極僅かな例ですが、夫の騎士位を継いだ女騎士の活躍や、女性の爵位継承者の活躍などもあり、貴族の女性の自由は、ある程度容認されるようになっています。
ただし、平民については別です。
女性が仕事、家庭以外の場で働くといえば、それはそのまま「かわいそう」なことであり、「いかがわしい」ことであると思われてしまいます。
例外は、貴族階級の屋敷や、大きな商家での侍女や召使いや下働きとしての奉公のみとなります。
当然、平民の女性が個人で、封建体制の壁を上位方向に超えるのは、ほとんど不可能となります。
中央集権が進む連合王国では、大貴族の勢力を牽制する意味も含めて、平民の力が相対的に上がっています。
そのため、制度の上では、貴族の女性と平民の男性の恋であれば、平民の男性が能力を示し、騎士となることで成就される可能性がありますが、逆の場合、親族の反対にあったら、愛妾の地位で我慢してもらうか、男性側が地位を捨てなくてはならない事になります。
周囲の同意があれば、別の貴族の養女や騎士の夫人として一度平民から貴族にする事で、貴族の男性と平民の女性の婚姻は可能です。
・性差別と恋愛 2
連合王国内部では、そもそも貴族の未婚女性が目にする男性といえば、親族か召使いのどちらかしかいません。
学問を修めるような意識はありませんので、よほど教育熱心で、様々な習い事をしている場合でも、歌や踊りや演曲等であり、教師役は女性です。
書物も無いので恋愛小説などありませんし、語り部の語る物語の大半は、かなり殺伐とした、「ほんとは怖い〜〜」的童話です。しかも貴族の娘の結婚は、早ければ12〜3歳、おそくとも17〜8歳です。恋愛感情はあるにしても、恋愛観は未発達か皆無に近いものと思われます。
知識も教育もほとんど無い状態で、あるとすれば侍女から得る極僅かな偏った情報だけで、現代に通じるような恋愛観は、絶対に、育ちません。
平民が相手と考えると、よほど変わった状況下に置かれて、はじめて相手も一人の人間だと理解できるのかもしれませんが、戦争でも起こさない限りそうした状況は無いでしょうし、戦時下の異常な状態であれば、平民の一人が何をできるわけでもありません。
なにより、安定期に向かいつつある連合王国では、貴族の女性、それも未婚の女性が平民に会うのは、ほとんど不可能かと思われます。
買い物も、出入りの業者から品物を借り、侍女や家令が居室に運んで選びますし、衣服についても、周りの物が採寸し、型を取り、仕立て屋に出して、戻ってきた物を、再び侍女や召使いが着る時に縫いながら合わせます。
貴族の未婚女性が、儀式や祭典以外で外出する事もありません。
当然そこでは様々な身分の異性に出会いますが、「見かける」程度の接触で、言葉を交わすチャンスがあるのは、召使いと他の貴族だけです。
幼い頃がから沢山の召使いにかしづかれて成長した人間です。
それも下手をすると、自分の用を足したあとの掃除(モノも自身のおしりも)も召使いにしてもらうという、そうした召使いの立場を考えると、貴族の娘が、異性(異性の召使いが、そもそもそうした場にいるとは思えませんが…)とは言え、同じような召使いに恋愛感情を抱くとは思えないので、「召使い」は婚姻の対象からは自動的に外れます。
因みに、貴族は出来合いの服は着ませんし、そもそも出来合いの服を売る店はありませんから、買い物で召使い以外の平民と出会うというのも不可能です。
また、仮に誰かと出会って恋におちたとしても、貴族の女性の服は、脱いだり着たりするときに、いちいちそこかしこを縫い合わせて着るのが普通ですから、こっそり誰かと忍び合うとか出来ても、服を脱いだら一人じゃ着れませんし、脱いだ事が一目瞭然になります。
少し時代が変わって、大きく広がったスカートが全盛だった頃になると、スカートの下はそのまましゃがんで用を足せる状態になってますので、服を着たまま様々な用がたせますが、そうした特殊な衣装はありません。
そんなこんなで、身分制度は、制度だけじゃなく、生活スタイルからも支えられて成り立っています。
・妓楼
遊廓の事。
公的に認められた遊女を置く。
神殿の巫女による接待を起源としている。
・公娼
公的に認められた遊女。
・私娼
公の許可なく売春を行う者
・語り部と吟遊詩人
・結婚
土地の所有権その他の、様々な権益が絡まない平民の世界では、自由恋愛から結婚へと至る道が存在していますが、貴族階級にはそうした自由はありません。
家門を守る事は他の何よりも大切な事であり、結婚はその一部です。
貴族階級の結婚とはすべからく政略結婚となります。
・儀式
ある程度の身分がある場合、神殿での神前結婚が行われる事が多くなります。
そうでない場合であっても、エディウス神殿の神官か、アエリス神殿の巫女に頼み、祝福してもらう事が習わしとなっています。
・結婚:プリマ種
プリマの結婚は、多夫一婦制の通い婚が基本になります。
また、同時に複数の妻の下に通う場合がありますので、基本的には乱婚系の婚姻関係を構築しています。
その結びつきは、柔軟でありながらも、家を基軸にした非常に強固なものとなっています。
・結婚:ヴォル種
一夫一婦制の地域と一夫多妻の地域があり、それは固定ではありません。
一夫多妻の地域であっても、社会的には、基本的に男女差は殆ど無く、婚姻関係が、社会生活に影響を与えるのは、妊娠出産の間だけです。
一夫多妻の場合は、妻の誰かが妊娠中、他の妻がそのフォローに入る事で、同権の社会制度を維持しています。
・服飾
基本的には寒冷地向きの衣装となる。
貴族の場合、肌着に、下着と上着、更に首に防寒用の布を巻くのが基本のスタイルとなる。
平民には特にそうした決まりはない。収入に応じた相応の衣装を身にまとう事になる。
また、衣服に直接留め具を取り付ける事は行われておらず、ボタンの発明はあるが、アルールシアまでは広まってはいない。
そのため、衣服はベルトなどで縛って止めるか、着替えるたびに縫い付ける事で身にまとっている。
腰の部分で縛ったり、紐を通して縛り付けたりする衣装は、通常平民達の服であり、貴族階級の者が、公式な場での衣装として身に着ける事は無い。
貴族の衣装は、通常、着替える度に逐一縫い合わせて着るようになっている。
・衣類の素材
麻や木からとれる繊維、羊毛からはフエルトに毛糸、シダのような植物の胞子嚢からとれる繊維、輸入品となる絹や上絹とも呼ばれる鉱樹の樹液から作る樹絹、それに毛皮や皮革等が使われている。
極々少量の原種の綿花を利用した綿製品も存在するが、一般的とはなっていない。
この世界で生産されている綿花は食用としての改良が進み、種の毒性が除かれた事で、大豆と並ぶ、非常に良質な植物性蛋白源となり、綿毛については、セルロースのグリコシド結合が弱められ、唾液などの非常に弱い酸で分解され、グルコース、つまりブドウ糖に変わってしまうため、繊維としての利用は不可能となっている。
・服飾
アルールシア帝国では、その服装で凡その身分を判断可能です。
都市部に居住する平民達の着る服は、男性が腰のところを紐で結ぶだけの、簡単な筒状のズボンを履き、女性は巻きスカートか、腰のところを紐で結ぶだけの円筒形のスカート。
上は、多少の変化はありますが、紐で前を結ぶ着物か洋服のような形状であり、大半はただ前を合わせて、腰紐で止めているだけで、着替えはほとんど持っていません。
田舎や農村部の平民達の服装になると、フエルトや毛編物、もしくは皮革や毛皮等の上着やズボンに、植物繊維で織った下着という格好とななります。
構造そのものはほとんど変わりません。
因みに簡単な止め具はありますが、服に縫い付けて使う、ボタンやフックのような発明はありません。
また、平民の手に入る生地の大半は、繊維の質が悪く、たとえボタンが発明されていても、それを止めるのは非常に難しいものとなります。
下級貴族やある程度の商人となると、平民の服より多少はマシな素材を使った服装をしていますが、形状形態そのものは、平民の服とほとんどかわりません。
ただし、その素材は上等なものとなり、重ね着のパターンや色合いにも気を使う事が可能となります。
また、貴族と、一部の大商人達に限り、『スカーフ』や『カラー』を使う事を許されています。
中級の貴族以上になると、通常は紐を使って身体に止める類の服は着ません。
毎朝着替えの時に召使い達によって、身体の各所を針と糸を使って縫い合わせて身にまとい、脱ぐ時は同じ様に、召使いによって脱がせてもらいます。
ただし、下着については、紐を使って身体に止めています。
また、戦場で使われる衣服については、背中や脇を編み紐を使って押さえるものが一般的となっています。
上級の貴族も中級の貴族達とほぼ同様ですが、素材や裁断や縫製にはさらに気を使った、最上級の物を使っています。
・技術
帝国における一般的な生産関連技術や、魔法と特殊技術についての説明になります。
・魔法
帝国での魔法関連の技術を書いていきます。
この世界の魔法は、一度は失われた古代の微細機械群の操作技術を、野生化した微細機械群を様々な経験則や実験、研究の成果によって再習得したものとなります。
野生化した微細機械群は、惑星上のあらゆる場所に存在し、魔法使いにはマナと呼ばれています。
・ 魔法使い
魔法を使える者は、遺伝によって生まれます。
魔法使いは全て、先史文明の頃にある種の遺伝子改変処理を受けた人々の子孫です。
特徴として、脳の前頭葉に特殊な送受信器官が備わっており、電磁波及び、高周波のパルス音を発生させる事が可能です。
これが魔法使いの資質と呼ばれるもので、外見上は見分けがつきませんが、魔法使い同士ならば、接触によって、ある程度判別が可能です。
その遺伝形質は広く拡散し、全世界に広まっていますが、非常に不安定であり、両親が共に魔法使いであっても、その子供が魔法使いの資質をもつとは限りません。
アルールシア帝国では、一般的に魔法使いは畏怖されており、国家として保護、統制の対象となっています。
全ての魔法使いは登録され、様々な特権と共に、無数の制約も受けています。
最大の制約は、全ての魔法使いに着用が義務付けられているローブにあります。
通常、自宅以外でローブを脱ぐ事は認められておらず、魔法使いか否かについては、一目瞭然となっています。
魔法使いのローブは、その昔、被差別民の象徴的な物でしたが、現在では、魔法を使える者達にとっての誇りの象徴でもあります。(地域によってその意識の差が大きい)
皇帝直属とされる、魔法使いの登録機関については、魔法使い達による自治が認められていますが、同時に非常に厳重な監視体制もひかれています。
・魔法の行使
魔法使いが魔法を使う場合、脳の前頭葉の一部が興奮し、それに伴い特定周波の電磁派や音波を発生させます。
必要なエネルギー量が大きく、その際に発生する熱も大きいため、マナさえあれば、いくらでも使えるというものではありません。
いざとなれば、体内のマナを使って冷却したり、エネルギーの補充を行ったりといった行為も可能ですが、無理をすればその分、体内のどこかしらに負担がかかるため、魔法の使いすぎは、非常に危険です。
無茶な魔法の使い方は、即座に脳の破壊へとつながりますし、そこまでいかなくても、恒常的に限界まで魔法を使い続けるような生活が続くと、エネルギー消費から体内の体液バランスを崩したりしますので、肝臓やすい臓その他内臓への負担を大きくし、最終的には深刻な内臓疾患を引き起こします。
・マナ
魔法の元となるマナには、一般に知られているだけで10の種類があり、使用者はそれぞれ得意なマナの種類によって、幾つかの系統に分類されます。
マナは単体ではほとんどなんの力もありませんが、集団化した場合に、ある程度の命令を行使可能な存在になります。
その力はマナの種類によって違い、様々な「習性」があります。
たとえば、鉄の粉末に好んで集まるものや、炭素やその他有機系の材料を好むものなどで、魔法を使うものは、必要とされる魔法に応じ、必要とされるマナの好む材料を振りまいたり捧げたりして、準備を行い、集まってきたマナに命令し、魔法を行使します。
また、マナの量が一定の段階を超えると、自律行動可能なレベルにまで能力を高める事が出来ます。
主なマナの種別(西方の門派)
地(土門)
水(水門)
火(火門)
風(風門)
光(陽門)
闇(陰門)
神(金門)
命(木門)
・光(陽門)
幻術や光を扱うマナと魔術を専門とします。
・闇(陰門)
主に精神に影響を与えるマナと魔術を扱います。
ただし、竜やドラゴンの扱う魔法には、全てを飲み込む、真の闇を作り出す、強大な魔法も存在します。
・神(金門)
神殿の神々よって行使される、様々な奇跡を行うマナの総称です。
野生化したマナと違い、本来の能力と、機能を十全に発揮する事ができます。
通常は様々なメンテナンスに働くマナしか漂っていませんので、魔法使い達は、神殿で行われる奇跡は、主に鉱物や金属を制御するマナによって行われるのだと信じています。
・地(土門)
岩石や鉱物に関わる魔法を扱います。
通常、神殿に漂うマナの大半は、この地のマナです。
希少土塁や鉱物から、金属を抽出したり、磁気を扱う事が可能です。
磁気の操作によって、物体の温度を制御する事も可能です。
・水(水門)
水を関わる魔法を扱います。
マナの混じった水溶液を制御します。
・火(火門)
熱と化学反応を制御する魔法を扱います。
・風(風門)
気体を扱う魔法を専門としています。
扱いが難しい魔法ですが、他の魔法の補助として使用すると、非常に高い効果を得る事が可能です。
静電気等の電流を扱う事も得意です。
・命(木門)
怪我や病気の治療をはじめ、肉体の制御を行う魔法を扱います。
・建築土木
国の基盤となる、農業生産や都市の成立に直結する技術です。
古来、農業生産力の維持・拡大に必要とされる治水や灌漑の技術も含まれます。
この世界では、魔法よりよほど重要です。
・築城・建築
長期にわたって、人災や自然災害に耐え得る建築物を作る技術。
一般的に、その技法は秘密にされている。
・治水と灌漑
治水と灌漑の技術と能力が、農業生産物を経済的な土台としている国家にとって、最も重要である事は、この世界でも変わらない。
アルールシアでは、主に畑地灌漑が重要視されている。
・金属加工関連
この世界では、魔法による高度な金属加工が可能ですが、大量生産するのは不可能で、最先端技術とも呼べない、完全に趣味の世界です。
一般的な金属加工については、様々な鋳造技術をはじめ、鍛造の技術もそれなりにあります。
ただし、この世界の金属資源は、先史文明によって粗方掘り尽くされています。
鉱樹類から採集される金属資源を利用するしかありませんが、その量も、よほど大規模な国家的な計画でなければ、少品種少量生産の、家内制手工業レベルから抜け出せません。
・工芸
金細工やガラス、陶磁器や縫製につながる糸の生産、漆器やこの世界独特の、鉱樹類の幹やその芯を加工するもの、それから漆に近いですが、ポリプロピレンやアクリル様の熱可塑性樹脂など高分子化合物を分泌する植物がありますので、それを利用した工芸品や、ポリアミド系樹脂、重油(原油や軽油やガソリン等に近い物を分泌する植物は知られていない。火山地帯に多い)やアスファルトのような樹液を出す鉱樹類も存在しますので、それらについても様々な活用がなされています。
・ガラス
ガラスは、鉱樹類やその他の植物を燃やした灰から抽出したものを集めて溶融し、製造されている。
そのため非常に希少で高価であり、しかも生産には膨大な量の木材が必要となる。
製法については、鋳造ガラスと吹きガラスの技術が存在し、大きさは限定的だが、初期的な板ガラスの製造も可能となっている。
また、ある種の鉱樹類の灰を混ぜる事で、美しい緑色の蛍光色をもつガラス(地球ではウランガラス)や非常に屈折率の高い、透明な美しいガラス(クリスタルガラス)等も作られており、そうしたガラスの製造法は、門外不出の極秘とされている。
・貴金属
主に装飾などの材料とされる。
金細工、銀細工など。
やはり鉱樹類から抽出された物を使っている。
・漆器
通常は漆の樹液を採集して加工されますが、この世界では、漆だけでなく、鉱樹類から採集される、ポリプロピレンやアクリルなどの高分子化合物による生産品も使われています。
・陶磁器
高温の竈を製造する技術があり、陶器も磁器も存在しているが、その製法は秘されており、非常に高価であり、王族でもない限り、日常的に使用できるものではない。
辺境に行けば、鍋や釜として、土器が日常的に使われている地方も存在している。
それなりに大きな貴族でも、磁器を食器として利用する事は稀で、大抵は金属製の器や皿を使用している。
美しい模様や絵が描かれた陶磁器の類は、それだけで美術品として流通し、飾られるべきものとされている。
・宝石
砂で傷がつかない貴石を宝石と呼ぶ。
この世界では、宝石と陶磁器の生産に必要とされる粘土以外、大地を掘り返して探さなくてはならない物が存在しないため、宝石の価値はより高くなる。
また、鉱物としての宝石以外に、マナの結晶体も、貴重な宝石の一種として珍重されている。
・酒造
蜂蜜、米、小麦、大麦、ライ麦などの他、ブドウなどの果実や、樹液、サトウキビや家畜の乳からも造られる。
ヴァイレサック原産の裸子植物から大量に分泌される樹液を集めて造られるものもある。
蒸留酒の製法は未だ無い。
・農業
種をまく時期から育成、収穫、それから品種改良に関するものなど様々な農業技術がありますが、特に鉱樹類の品種改良については、国家的な保護を受け、学者達の一定の理解の下で継続的に行われています。
・畜産
畜産業は、放牧や遊牧によって行われています。
技術的な差はありますが、地球上で行われているものと大きな差はありません。
家畜の種類は大きく違う場合があります。
・狩猟
野生動物を捕獲して肉や皮や内臓、骨等から様々な産物を得ています。
罠や弓、槍などを使って行います。
様々な危険生物を専門に駆逐する者達も存在しており、集団で辺境地域を巡っています。
・漁業
船を使って魚を捕らえます。
針と糸をつかったり、網をつかったりします。
鯨や海竜を専門に捕獲する者達もいます。
・捕鯨
銛を使い、集団で鯨類を追って捕獲します。
・海竜狩り
捕鯨にも増して盛んなのが海竜の捕獲です。
良質な油と肉、鎧や様々な加工品となる皮と骨がとれます。
・大陸公路
国家が成立している3つの大陸の全てを結ぶ、通商交易路。
伝統的にヴォル族の管理下にあり、辺境域では特にその傾向が強い。
各国共に、公路の維持が、大規模な災害や不作に伴う飢餓に対する備えともなっており、長期にわたって公路の運用を妨げる行動は、ヴォル族の反発を招く可能性も高く、戦時であっても封鎖される事は稀である。
ヴォル族=公路の番人、とのイメージがある。
原曲とは大きく変化しているが、「犬のお巡りさん」の歌が伝えられている。
・ルシア公路
帝国では、ダーランからルシア平原を抜け、エルナミス川へと至る交易路を、独自に開発し、ルシア公路と呼んで維持管理しています。
ルシア公路の基点は帝国第二の商業都市であるワトフォートで、連合王国の成立以前は、両国を分けるエルナミス川を南北から挟み込むようにして作られた、国境中部の城塞都市でした。
その後、連合王国及び、帝国の成立によって、両国の商業の中心として発展しています。
ルシア公路は、ムルやチルといった北東のプリマ領を経由せず、ダーランから直接アルールシアに向かい、エルナミス川からは船による輸送が可能であるため、ルシア平原の大都市とワトフォート、それからエルナミス河口に位置する帝都と、ソナスの旧アルールシア王都等を結び、大陸公路の中でも最大級の賑わいを見せています。
・生物
ヴァイレサック固有の生物に、他の惑星系から持ち込まれたもの、それから地球から移植されたものと、複数の進化系統に属する生物が存在し、更に、そうした生物を改造した、遺伝子改変生物や、微細機械共生生命、微細機械群体などがいます。
・生物
ヴァイレサックの生物
ヴァイレサック固有の生物に、他の惑星系から持ち込まれたもの、それから地球から移植されたものと、複数の進化系統に属する生物が存在し、更に、そうした生物を改造した、遺伝子改変生物や、微細機械共生生命、微細機械群体などがいます。
この世界で、もっともユニークな存在といえば、20種以上も存在する、ドラゴンと呼ばれる恐竜様の種族です。
元々は、大崩壊以前に遥か他星系から移植された生物で、大崩壊の直前には、地球系列の知的種族に対する遺伝的な刷り込みの改造が行なわれ、知性化の直前の段階まで到達していた存在です。
この惑星に移植されたドラゴンのなかで、最大の種族は海洋性のリヴァイアサンと呼ばれる種族ですが、飛竜や地竜、と呼ばれる、人が好んで使役する中型のドラゴンであっても、飛竜で翼長十メートルを超え、地竜といえば、体重6トンを超える個体も存在しています。
もちろん地球から移植された牛、馬、豚等も、この星で野生化しています。
因みにヴァイレサック原産の生物は、捩れた1本鎖の遺伝子と、をれを纏める機能をもつ単機能型の補助形質を基本としており、その不安定さの割には、比較的巨大な陸上生物も確認されています。
大きな部分を見れば、地球系列の生命とは全く似通った部分は見えないが、4足以上で歩行する生物は基本的に三点支持歩行を行なっているし、さらには2種(群体生物の中には5種以上の性をもつ生物も確認されている)以上の異なる性(主に不安定な遺伝子を補完する機能をもつ)を発達させていたり、地球の白亜紀の頃に存在した可能性の高い、豊かな生態系を作り出しています。
・知的種族
人間、プリマ、ヴォル、イルカという、地球産の知的生物の中には、古代文明の遺産とも言うべき、この惑星独特の進歩(進化というべきか?)を遂げたらしい、微細機械技術と生命工学の融合によって生まれた、様々な特殊な能力を受け継ぐ者達が存在しています。
他に微細機械共生体や、微細機械群体の神竜、妖魔、精霊と呼ばれる自律型の人工生命が存在します。
ただし、4000年前に、他の種族と同時期に入植したはずのネオ・ドルフィンは、完全にその出自を忘れ去ってしまっており、原始化してしまっています。
繁殖の機能が無い人工知能についてはここには含まれません。
四大主系種族
Homo Sapiens(人間)
Terran(地球人)
Neo Troglodytes(ネオ・チンパンジー)
Prima (Vwilzack Unique)
Neo Canis Lupus Familiaris(ネオ・ドック)
Vwol (Vwilzack Unique)
Neo Tursiops Truncatus(ネオ・ドルフィン)
・人間
基本的に地球に存在するあらゆる肌、目、髪の色が存在し、更に金や紫の瞳や、紺や紫といった頭髪まで追加されています。
外見的特長としては、混血が進んだ後、この星での生活から、島嶼化によって小型化したり、極地での生活から体系が丸くなっていたり、肉食による体の大型化や、草食による腸の伸長と胴体の延長等、様々な特徴が、改めて加わっています。
遺伝的には、凡そ地球産の人類と同様ですが、原人間は極少数で、大半が何らかの遺伝子操作を受け、様々な部分で強化されています。
また、魔法を使える、前頭葉に脳波の共鳴増幅器官を持つように改造された者も存在しています。
こちらは外見的には一般的な人類と殆ど変わりませんし、交配も可能です。
他にも様々な亜種(バイオロイド起源)も存在します。
特に特徴的であるのが、額に第三の目を持っていたり、尖った耳に、菱形で真珠色の器官を備えている者、それから3メートルを超える巨体にまで成長する種族、さらに、微細機械を介し、巨大な鉱樹類との共生関係に特化した長命種族などです。
・変異種
変化種とも呼ぶ。
獣人態への変身を可能とした種族等が存在する。
体内のマナの量が異常に多く、代謝に利用される共生体の量も多いのが特徴。
体内のマナの量も多く、また、食物からエネルギーへの転換速度も非常に速いため、活動しながらエネルギー補給を繰り返す事で、長時間の全力行動が可能。
マナの経口補給(主に血液中に存在する物を利用する)が可能な種族も存在する。
・セリス
sellce(セリス)族
・ミーノン
meenon(ミーノン)族
・知性化種族
知性化技術によって、準知的種族から知的種族に改造された種族(=類族(クライアントレース)とも呼ばれる。知性化を施した種族は主族(パトロンレース)と呼ぶ)
知性化はアップリフトとも呼ばれる。
・プリマ
Prima (Vwilzack Unique)はNeo Troglodytes(ネオ・チンパンジー)起源の知性化種族です。
ヴァイレサック・ユニークと呼ばれるヴァイレサック固有のチンプ種族です。
主な違いは、一般的な地球系列のチンプよりも2割程大柄な体格と、複数の縞模様がある点になります。
・ヴォル
Vwol (Vwilzack Unique)はNeo Canis Lupus Familiaris(ネオ・ドック)起源の知性化種族です。
一般的に『ヴォル』の名称は、その吼えるような独自言語から、付けられたと考えられていますが、実際にはネオ・ドックの俗称である、ヴァルグル人が訛って短縮されて生まれた呼称です。
ヴォル族は、人類種やプリマ種が分解できない幾つかのたんぱく質を分解可能な酵素をもっており、恐らく最もこの星に適応した地球産知的種族であると考えられています。
さらに種族的な特性といえる、同族間の結束力、高い忠誠心を生かし、その勢力は人類種を遥かに凌いでいます。
大陸公路の守護者としての地位も確立しています。
・イルカ
Neo Tursiops Truncatus(ネオ・ドルフィン)
海洋生物のイルカは、既に全ての文明を失っており、原始狩猟生活に逆戻りしています。
もちろん、ネオ・ドルフィンの特徴である、人語を話す機能や、胸鰭の間に付け加えられた、指を持つ触手状の手も残っています。
が、機械文明が存在しない世界では、殆ど意味を成さず、ちょっとした悪戯程度にしか使用されていません。
また、海竜の大好物でもありますので、その生活は過酷です。
海神の使いであったり、海の守り神に使役されていると考えられているのは、古代地球と同様です。
・妖魔
ヴァイレサックに生息する、微細機械共生生命(大半の動植物と共生、寄生関係があります)のうち、積極的に微細機械群の能力を活用する種族で、主に微細機械群の能力によって知能を示す物をいいます。
人工の種族と、自然に進化した種族の二系統が存在します。
自然種は、地球産の知的種族とは思考法も嗜好も志向も、全てが違いますので、意思の疎通は困難です。
知能を示さないものについては、妖魔ではなく魔物と呼ばれます。
・使い魔
意思の疎通を可能にした微細機械共生生命の、特定のマナを支配下に置く事で、その基礎命令を書き換えた存在。
基本的には動物の部分の本能を基礎命令としている妖魔を、本来の微細機械の目的、道具として、人の命令に従う事、を優先させている。
簡単な指示しか聞く事しか出来ないモノが大半。
・竜族
・精霊
一定規模の特殊な微細機械群体生命です。
霧状(煙)であったり、泥や粘土、液体等の不定形であったり、結晶構造をもっていますが、高度な物は、様々な恣意的な形状をとることができます。
映画のターミネーターに出てきたT−1000のイメージが近いかと思われます。
他の微細機械群を使用したり、血液を精査する機能もあり、人語を理解する事ができますが、命令を聞くのは、専門に改造された特定の亜人種か、もしくは原種に近い人類だけです。
DNAの改変度合いによっては、ヴァイレサックの人々でも、使役する事が可能です。
物語的には、血の盟約をもって使役する契約を結ぶ、とします。
・神竜
他星系の進化樹に属する生物と、ヴァイレサック固有の生物、地球産の生物で、単にドラゴンの様な印象を受けるため、ドラゴンと呼ばれている種族、それから完全な人工生命と、幾つかの種類が存在しますが、大半は準知的種族です。
神竜と呼ばれる、巨大な人工生命は、寒冷で、非常に壊れやすいヴァイレサックの気象のコントロールを司っています。
全体のバランスをとりながら、二酸化炭素などの温室効果ガス量の調整や、森林資源の保護を行います。
複数の種族が存在し、海洋の生態系を司るものと、陸の生態系を司るものがおり、一般的に目にする可能性があるのは、翼をもつ、西洋的なドラゴンです。
海洋型は東洋の竜に似ています。
ドラゴンは、体内に竜珠と呼ばれる、微細機械結晶でコーティングされた超重量物質を持っており、それを利用して空を飛びます。
・植物
ヴァイレサックには、惑星固有の植物と、地球産や他の惑星系で進化した植物と、それらの植物から人工的に生み出された、遺伝子改変植物が存在している。
大半の人工植物は野生化し、それぞれの原産固有種と交じり合い、また新たな種を生み出している。
ヴァイレサックの植物の大半は、裸子植物様の種が大半で、胞子状の種を風によって撒いたり、菌糸を伸ばして分裂したりして繁殖するものが一般的である。
ヴァイレサックの遺伝子は、同じ情報が繰り返し現れる、絡まりあった長大な一本鎖の高分子生体物質で、地球産のDNAと良く似た構造を持ち、RNA様の補助遺伝子がそれを維持・複製している。
核酸を構成する塩基については、地球産生物とは違い、4〜9種類の有機化合物を利用し、3種類以上の複数の進化樹を構成している。
また、地球や他星系からの移植植物との相関関係によるランナウェイプロセスを経て、独特の生態系を作り上げている物も見られる。
単独で見た場合、地球産の植物や、それ以外の星のから移植された植物もそれぞれ独自に繁茂しており、貧弱であったヴァイレサックの生態系を強化している。
ヴァイレサックの生命は、地球と比べて数億年の単位で遅れて(地球より寒冷であったため、より早く冷え、惑星年齢の早い段階から生命の進化がスタートしている)生まれているため、地球産の、数十億年の進化のレースに勝ち残ってきた生命達より、遥かに脆弱な防御機構や繁殖系しかもっていない。
本来であれば、地球産の生命には全く太刀打ちできない可能性が高かったのであるが、若く、脆弱であったが故に、選択的に持ち込まれた他星系産の植物が入り込まない、生物学的な空白地を上手に活用する事で、見事に生き残っている。
ヴァイレサックの植物の中には、二つ以上の性を持つ種も存在しており、環境や状況に応じて、驚くほど姿を変えてしまうものもある。
主な地球産植物のなかで、ヴァイレサックに適応した植物は、杉、檜、松、楡、樫、ブナ、イチイ、銀杏、楓、椛、モミジ、アカシア、ポプラ、ヤシ、ナツメ、竹、梅、桜、ヤナギ、ガジュマル、マングローブ、ハンノキ、カリン、ナシ、メドラー、りんご、杏、梅、さくらんぼ、モモ、アーモンド、銀杏、クリ、胡桃、ペカン、アケビ、イチジク、カキ、キーウィ、グミ、ざくろ、木苺、クランベリー、クワ、スグリ、ナツメ、コウメ、ブドウ、ブルーベリー、ブラックベリー、みかん、伊予柑、オレンジ、カボス、グレープフルーツ、ダイダイ、デコポン、八朔、ナツカン、ゆず、ライム、ベルガモット、レモン、オリーブ、ビワ、アセロラ、アキー、アボガド、キワノ、グアバ、ココナツ、スターフルーツ、タマリロ、ドラゴンフルーツ、ドリアン、ナツメヤシ、パイナップル、パパイヤ、バナナ、ババコ、フェイジョア、マンゴー、マンゴスチン、ライチ、ミラクルフルーツ等
小豆、イチゴ、インゲン、エンドウ、エダマメ、オクラ、カボチャ、キュウリ、キワノ、ゴマ、ササゲ、シイタケ、シロウリ、スイカ、ズッキーニ、ソラマメ、大豆、チョロギ、ゴーヤー、トウガラシ、トウガン、トウモロコシ、トマト、ナス、ナタマメ、ニガウリ、ピーマン、ヘチマ、ペピーノ、マイタケ、マクワウリ、メロン、カンピョウ、落花生、レンズマメ、アスパラ、ウド、ザーサイ、サトイモ、ジャガイモ、ショウガ、タマネギ、にんにく、ネギ、ヨウサイ、ラッキョウ、レンコン、ワサビ、カラシナ、キャベツ、クレソン、ケール、コマツナ、ゴボウ、サンチュ、サントウナ、春菊、セリ、セロリ、タカナ、チンゲンサイ、ニラ、ノザワナ、ハクサイ、パセリ、フキ、ほうれん草、ミズナ、ミツバ、メキャベツ、ルッコラ、レタス、カブ、サツマイモ、サトイモ、大根、ナガイモ、ニンジン、ヤマイモ、アーティチョーク、カリフラワー、ブロッコリー、キク、ミョウガ等が存在し、他にもバラやユリ、蘭といった、さまざまな草花が移植されているが、大半は、原種より、よりヴァイレサックの気候風土に合わせて遺伝子改変された種となります。
・鉱樹類
土中から多量の金属成分を吸収し、幹や葉に凝集する、微細機械共生植物の総称。
前史文明の終末期に生み出された遺伝子改変植物であり、知られているだけで数百種類が存在している。
鉱樹類の特徴は、その葉に存在する。
全ての鉱樹類がそうなわけではないが、葉の表面が緑色であるのに対し、葉の裏側に鉱物質の層を作っている。
大抵は、毎年その秋に、落ち葉となったものを採集して利用する。
ヴァイレサックでも最も特徴的な植物である。
鉱樹類で最大の物は、楡の仲間を遺伝子改変する事で生み出された巨木が存在する。
樹高は二六〇メートルにも達し、幹はもちろん、葉や種子にも大量の金属が含まれている。
また、鉱樹類には、ポプラやブナ、カヤといった植物の他、ヴァイレサック固有種の低木類も多く見られる。
それぞれ凝集する金属が違うため、鉄や銅、錫、亜鉛、鉛、クロム、金、銀、白金などの重金属や、マグネシウム、アルミ、チタン、ベリリウム等の軽金属は、それぞれ全く違う木々から収穫される事になる。
当然ながら、付近の地下にそうした金属類が存在しない場合、そうした金属が凝集される事は無い。
また、技術的に利用法が無いため、アルミ、チタン、ベリリウム、コバルト、タングステン等の鉱樹類は、加工にも向かず、基本的には利用価値がないものと考えられている。
ウランやレアメタルの類を凝集する鉱樹類も存在するが、ウランなどの放射性物質については、希少であるため、それほど大量に凝集できるわけではなく、また、一枚一枚の葉に含まれるウランの量が限られるため、ウラン単体でなら核分裂に至るだけの量が含まれている物でも、全体としては膨大な量となってしまうため、そうした意味での大きな危険はない。
数万年単位で同じ場所にウランの木が生長を続けた場合、落ち葉から自然凝集し、さらに核分裂反応にまで至る可能性はあるが、それだけ長期にわたって同一の場所に同一の樹木だけが成長を続けられるわけが無く、レントゲン撮影で受けるレベルの放射線以外に気にする必要性はない。
ディータ大陸の、一部のヴォル領域の名産品に、ウランの葉を集めて、アルカリや酸を使った複雑な工程を経て精製する酸化ウランを混合した、高価なガラス製品が存在し、各国の王侯貴族に珍重されている。
ナトリウムやセシウム、マグネシウムなども鉱樹類から採集可能で、火薬代用品というより、この世界の場合、火薬がそうした物質の代用品として利用されている形である。
因みにマグネシウムは、燃焼剤としてより、酸化マグネシウムとして、下剤などの医薬品の材料としての利用が一般的である。
また、特殊な鉱樹類として、精製して鉱物を抽出するのではなく、幹を加工して利用する類の鉱樹類も存在する。
非常に成長の早い、シダ類に良く似た黒い木が有名で、黒い黄金とまで呼ばれる貴重な樹木がある。地下に水源が存在する乾燥地帯にのみ生育するため、ディータ大陸の西部ヴォル領域や、中央大陸の一部でしか見られない。
成長するに従い、やわらかい表皮を支えるため、中心に黒い結晶構造(複合炭素結晶体)を生成し、数メートルの高さにまで成長する。
非常に軽く強靭で、削り出す事で、様々な用途に使用できるが、鎧など材料として使われる事が多い。
・繊維植物
この世界では、遺伝子改変によって毒性を取り除かれ、生産されるセルロースのグリコシド結合が弱めらられた綿花が、様々な地域で主食(食べて噛むと唾液で分解され、グルコースに変わる。調理しても、そのまま食べても良い)として利用されているため、繊維としての利用は進んでいません。
この世界の木綿に良く似た素材として、ヴァイレサック固有の植物が存在しています。
これは地球のシダによく植物で、胞子嚢の綿毛を収穫して紡績し、繊維として利用しています。
他に、麻やバナナの仲間の幹を、繊維として利用しています。
・陸上生物
植物と同様、この世界の固有種以外に、地球等他の惑星から移植された動物達が多くいる。
更にそうした動物達から生み出された新しい種も存在する。
・魔物
微細機械共生体との暴走進化の過程で生まれた種族と、古代文明の負の遺産。
・大型
竜やドラゴンと呼ばれる、恐竜のような、巨大生物や
・中型
・小型
・海洋生物
・魔物
・大型
・中型
・小型
・ネル
ネルやハイズの地名がある半島地域は、暖流の影響下にあり、帝国では唯一の温帯湿潤気候地域となりますが、数十年前まで、非常に活発な活動を続けていた火山が存在するため、ほぼ全土がシラス台地に広がる森林地帯で、大規模な灌漑をおこなわなくては、農地としての利用は難しいものとします。
また、半島の人口の大半が居住しているネル盆地は、この半島そのものを形成した火山火山がうみだしたカルデラであり、無数の湧水や温泉、それから東海岸の活火山が名物となっています。また、騎竜の産地としても有名で、良好な騎竜を数多く産出しています。アルールシアでは騎竜の放牧が可能なのはこの地域だけです。
半島沿岸部の大半がリアス式海岸となっており、海岸線の大半が断崖で、港を開ける海岸はほとんどありません。
北部のハイズ地方では、比較的水利の良い谷間や盆地を利用して放牧を行い、僅かな耕地で豆や根菜類を栽培しています。
ネルの北東沖に存在する群島には、遥かヒュヨや、遠い西方諸国から流れ着いた海の民達によって、一種の海洋国家共同体とでも言うべき集団が形成されており、アルールシアや遥か西方のカレスやワイプルース、それからミーディスといった海洋国家と、東方の海上交易路の支配権を巡って争いあっています。ただし、天測航行が可能なだけの航行技術をもっているのは、ミーディス、ワイプルース、そしてベルリア諸島の船乗りだけで、その他の国々の船乗りは、沿岸航行が基本になります。
・ネル騎士団
・ハイズ伯爵
・神々
この世界には、神々と呼ばれる存在が、人々の身近な場所に存在しています。
大半の神々は、活動を続ける先史文明の人工知能であり、その知識と保守用でもある、様々な微細機械群を使いこなす能力によって、神として崇められています。
神々や保守用の微細機械群の補助を受け、活動を続ける自律型(第零法則に基く行動をとる)の自動機械も現存している。
神々は、言葉を交わせる者の呼びかけに答えて、巨大な力を振るう事があります。
それは、直ちに神官の力というわけではないですが、神に設定された初期条件に合致する「祈り」であれば、聞き届けてもらえる事があります。
当然、この世界の微細機械(だけではなく、比較的大型の機械も制御下にある場合もあります)のうち、いくつかの種族は、神の制御下にあります。
神同士、ネットワークが残っている場合は、会話したり、協力したりもします。
また、宗教化するくらいに強力な物だけでなく、地方には小型の比較的能力の低い神も残存している場合があり、土地の守り神的存在であったり、一家を守る座敷わらし的存在のものもあります。
・神の使いとゴーレム
生き残っているアンドロイドやロボットです。
・神々とマナ
マナの大半は、野生化した微細機械群です。
中には当初の設計とはかけ離れた存在となっている物もあります。
この世界では、地表に現れている金属類や希少土塁の大半が、マナの形で大気中を漂っています。
野生化していない、つまり、神々、古代の人工知能の管理下にある微細機械群は、常時メンテナンスを受け、余計な変化を排除し続けています。
また、微細機械の暴走に対応するための『ロイコサイト』も管理されています。
人の知るマナの区別は10種類ほどですが、実際には数百種類以上の微細機械の混成体であり、その割合によって、土だの火だのと分けられているだけです。
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